新しく犬や猫を迎えたご家庭では、ワクチン接種のことを考える機会があるかと思います。
今回は、感染リスクの高い子犬・子猫のワクチンの接種時期について、よくいただくご質問を通して解説します。
*そもそもワクチン接種は必要なの?
近年はワクチン接種普及の効果もあって、数十年前と比較するとワクチンで予防できる感染症の流行は目立たなくなっています。
しかし、現在も致死的な感染症で亡くなる子犬・子猫が存在することは確かであり、ワクチンは、そうした被害を最小限にするために必要です。
*子犬・子猫のワクチンはなぜ複数回接種するの?
生まれたばかりの子犬・子猫は、感染症から身を守るための抗体を持っていません。
一方、出産直後の母親から出る母乳(初乳)には抗体が豊富に含まれており、子犬・子猫は初乳を飲むことで、抗体を手に入れます。
この抗体を移行抗体と呼び、ウイルスなどが体内に入ってきた際に戦ってくれる味方となります。
したがって、幼児期の犬猫は母親からもらった移行抗体のバリア機能に守られている状態です。
それではなぜワクチンを接種するのでしょうか?
図に示したように、母親から譲り受けた移行抗体は体内に定着することができず、生後2カ月齢(8週齢前後)から段々と量が減り始めます。
するとバリアがどんどん弱くなり、感染症にかかりやすくなってしまうのです。
ここで重要となってくるのが、ワクチン接種です。
ワクチンを接種すると、今度は自分の力で作った抗体が体内に増え、弱まったバリアが再び強化されます。
こうして免疫を完成させることが子犬・子猫におけるワクチン接種の目的となります。
しかし、ここでひとつ問題があります。
移行抗体が減ってきていても、一定以上の量が残っている場合、ワクチンに対してもバリア機能を働かせてしまいます。
その結果、ワクチン由来の抗体が体内で増えず、バリアが弱まったままとなります(これをワクチンブレイクといいます)。
つまり、ワクチン接種により十分な抗体を手に入れるためには、移行抗体がある程度少なくなったタイミングを狙う必要があります。
ただ、移行抗体が減るペースには個体差があるため、1回のワクチン接種のみで、抗体の減ったタイミングを狙うことはできません。
その代わりに複数回のワクチン接種を行うことで、適切なタイミングを逃さないようにします。
*ワクチン接種の間隔はどのくらいがいいの?
感染症にかかるリスクによって多少変わりますが、子犬・子猫ともに基本的には4週間(1ヵ月)毎に複数回接種し、生後4ヵ月齢で1年目の接種スケジュールが完了します。
最終接種の1年後に追加接種を行います。
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